「天使のゆりかご」

( 番外編 )


【リリィとインテのワルノリ計画】


 研究所と、巨大な小屋のある孤島――。
 身長300メートルを超える白亜が治める独立地帯は、事実上、主任のリカコが統治していた。
 と言っても、好き放題やってるだけだが……。
「見て見て、白亜ちゃん! このクジラ!」
「まぁ。かわいいです」
「このクジラは品種改良によって、海水を吸うと爆発的に膨張するのよ!」
「……どこかで聞いたような体質ですね」
「これが成功すれば! 白亜ちゃんもおなかいっぱいのサカナを食べられるわ!」
 リカコの発言に、はっと白亜は息を呑んだ。
 感激したように目を潤ませる。
「まさか……島さん、わたくしのために?」
「気にしないでいいのよ、白亜ちゃん……さぁ、レッツ・トライ!」
 投石器のようなアイテムで、びよ~んっと海に放り込まれるクジラ。
 海水を吸い上げ、むくむく巨大化していくクジラを見ながら、白亜はポツリとつぶやく。
「……で? その大きくなったクジラさんは、どなたが捕まえるのです?」
「あ……」
 ポカンと立ち尽くすリカコ。
 ふたりの見ている前で、クジラはどんどん大きくなりつつあった……。


◆ ◆ ◆


 ――その頃、ニッポンのとある町。
 高層マンションの一室で、怪しげに微笑むふたりの少女。
「うふふ……ありがとね、リリィちゃん」
「いえいえ、めっそうもないですわ……ふふふ」
 顔を見合わせ、ほくそ笑むインテとリリィのドSコンビ。
 ふたりはひたすら、もちをこねていた。
「治々美市ドームの開場記念式典……そこで、この縮小薬入りわらびもちを配れば、あっという間に制圧完了ですわ」
「私はきなこもちがいいんだけどな……」
「いいや、くさもちだ!!」
 突然、どこからか男の声がした。
「だ、誰!?」
 突然のことに戸惑うインテに、姿なき乱入者は喝破する!
「君達の行動はお見通しだ! おとなしく出頭したまえ!」
「あわわわわ、どこにいるの? 誰!?」
「落ち着いてくださいまし。……お見通しですって? ふん、知っていて泳がせていたのですわ」
 リリィはもちをこねていた手を洗うと、手近なつっかえ棒を手に取り、台所の換気扇をがんがん叩いた。
「うわぁぁぁぁ!」
 巨人の攻撃を食らい、あっさり飛び出してくる小さな影が、ふたつ。
 1センチ弱のこびと2名は、換気扇から墜落してキッチンの上を弾み、床に転がった。
「ここしばらく、監視していたようですわね」
「自分から小さくなったのかな?」
「どこかで縮小薬を手に入れたのでしょうね……まったく。――さてと」
 リリィとインテは、くすりと意地悪く微笑んだ。
 足元の男達は逃げようとするが、前をリリィに、後ろをインテに立たれて挟み撃ちにされてしまう。
 巨大な足からたどり、相対的に160倍近い女巨人を、男達は見上げるしかなかった。
「ま、待て! 我々は極秘で…独断で来ただけで……!」
「それは好都合ですわ」
 リリィは腰を曲げ、男達に手を伸ばす。
 反射的に逃げようとしたが、インテの靴下をはいた足が立ち塞がった。
「だめ、逃がさないよ。あはっ」
「くっ……!」
「捕まえましたわ」
 リリィは2匹のうち、少し若い方を指先で挟んだ。
「うわー! せんぱーい!」
 助けを求めながら、上空へと連れ去れていく青年。
 メイド服の女巨人は、つまみあげた彼をくりくりと指先でもてあそぶ。
「ふふ……さぁ、どうしてくれましょう?」
「ヒッ! や、やめて……潰さないで……っ」
「あら、豆粒のくせに哀願? なまいきですわね」
 リリィはニヤリとほくそ笑んだ。
「この! そいつを放せ! このっ!」
 床に残された男はリリィの足を叩いていたが、リリィは痛くもカユくもない。
 必死になっていた男は、後ろからズシンと歩いてきたインテに驚いて追い散らされる。
 男の視点からは、ガーターベルトに吊られたメイドの脚や、ミニスカートのパンツまでまる見えだが、ふたりは全く気にしていなかった。
 むしろ、それは屈辱的な仕打ちだった。
「ほら、しっしっ。……ねぇ、どうしちゃう?」
「そうですわね……豆大福なんていかが?」
 リリィはつまみあげた青年を、突きたてのもちに乗せた。
 べちゃりと全身が張り付き、ねばねばして身動きがとれない。もがけばもがくほど絡まる彼を、リリィとインテは愉快そうに観察する。
 やがて近づいてきた指が、もちを軽々と小さくちぎっていく。
「や……やめ……!」
 リリィの意図を察した青年が哀願するが、メイドは慣れた手つきで、くるりと、もちを丸めてしまった。
「……」
 包み込まれてしまった青年の姿は、もう見えない。
 中でもがいているのかも知れないが、その抵抗はもちが全て吸収し、見た目はただの美味しそうな団子にしか見えなかった。
 ころころと丸く形を整えたリリィは、それをわさびじょうゆに――
「待った。そこはきなこだよ」
「な、何ですの急に。私は徳用チューブわさびを溶かした減塩しょうゆでしかお団子は食べませんわ」
「お嬢様なのに徳用にこだわるんだ……」
 やや呆れ気味なインテをよそに、リリィは団子をたっぷりとしょうゆにつけて、ひとくちでいただいた。
 ぺろり、と。
 口の中を通過した団子が、ゴクリと喉を通過して、胃袋に収まるまでの間、青年は文字どおり手も足も出せないまま運ばれていった。
「ふう……突きたてのおもちは最高ですわ」
「う~。ずるいよぉ、リリィさん」
 ぽんぽんとおなかを叩くリリィと、不満げなインテ。
 ふたりの足元では、目の前で仲間をまる呑みにされた男が、泣き喚いていた。
「くそっ……! 吐き出せ、今すぐあいつを出せよぉ! うああああ!」
「そういえば、どうしてもとのサイズに戻らないんだろ?」
「もとに戻る薬を、換気扇から飛び出した時に紛失したのでしょうね」
 インテは足元の男をつまみあげると、フッフッと軽く吐息を吹いてから、あらかじめ円形に薄く整えていたもちの上に乗せた。
 強烈なブレスを浴びせられた挙句、もちの上に貼り付けられた男は、怨嗟を吐き散らす。
「許さない、許さないぞ……絶対に捕まえて検挙して――」
 上から同じ形のもちを乗せられ、男の姿は二枚ぺたりと重なったもちの間に消えた。
 物言わぬもちと化したそれを、インテはきなこをたくさんつけて頬張った。
「ん。おいしーい!」
「しょうゆだと、もっとおいしいと思いますわ」
 もちは、サンドイッチされた男もろとも、インテのおなかにストンと収まる。

 ※ もちが喉に詰まると危険です。
   もちのまる呑みは絶対におやめください。

「――何ですの、今の声は」
「そんなことより、リリィさん。おもち作ろうよ」
 インテが促すと、リリィはくるるると鳴るおなかをさすった。
「ふふ、そうですわね」
 インテのおなかからも、くきゅるると消化を始めた音が鳴った。
 耳を近づけたら、こぽこぽという音も聞こえるかも知れない。もっとも、ふたりにそれぞれ食べられてしまった男達の断末魔は、もちに包まれて聞こえないだろうが……。
「なんとなく、食後の運動などしたいところなのですが……」
 目を薄く細め、ちらりとインテに色目を飛ばすが、インテはわずかにさえ動じずきょとんとしている。どうやら同性嗜好は開拓の余地もないらしい。
「……残念ですわ」
「え? なんで私が残念がられちゃうの?」
「どうしたものでしょう」
 ふむ、と考え込んだ、その時だった。
 ピンポーンと呼び出し音が鳴る。さっとインターホンを確認したインテは、ぽつりとつぶやいた。
「……公斗君だ」
「あらまぁ。それはまずいですわ」
 ほんの少し、リリィにも動揺が浮かぶ。しかし、放置するわけにもいかない。
「呼んでくる」
 インテは勇気を出して、部屋を出て行く。
「……念のため、お気をつけて」
 リリィとしても――公斗は、理由もなく女に殴りかかってくるような人物ではない、と見立ててはいる。
 が、計画を阻止するために、やむなく……という危険性はある。
 何より厄介なことに、副作用によって興奮するたび一時的に体が小さくなる体質になったものの、同サイズなら彼は間違いなく超人なのだ――
 ……そう、同サイズなら。
「ただいまー」
「ひさしぶりだな、リリィ」
 戻ってきたインテにくっついてきた時、公斗は小学生ぐらい小さくなっていた。
「おひさしぶりですわ、公斗様。……帰りのエレベータで何があったか容易に想像できますわね」
「べ、べつに俺は何も!」
「ちょーっとおしりを股間にくりくりしたら、いつの間にか顔にぐりぐりしてたよ」
「ほほーう」
「無表情な目で見るな!」
 公斗は地団太を踏むが、リリィはスッと彼の前に立った。
 豊満に実った大爆乳が、公斗の視界を埋め尽くす。
「おっ……うぉっ」
「あら、ごめんなさい。今の公斗様には迫力がありすぎますわね」
 ぎゅうっ、と公斗を抱き寄せる。必死に抵抗していたが、女の細腕でも簡単に抑え込める程度だった。
 少し公斗が小さくなった気がした……しかし、それほど縮まない。
「ぷはっ……へっ、今の俺は三平方の定理を唱えることで興奮を抑える方法を開発したんだよ!」
「……ふむ。それでは」
 リリィはそっと公斗に耳打ちした。
「…………子作りの方は順調でして?」
 言われた途端、反射的に出てきた白亜のイメージが、三平方の定理をかき消した。
 直後、白亜のアラレもない姿が脳裏いっぱいに駆け巡り――
 公斗の体は、一気に人形ぐらいまで小さくなった。
「あのお嬢様は便利ですわね」
「くっ、くそーっ! 卑怯だぞ!」
「あははは、かっわいーなー」
 ぷんすか怒る公斗を、ひょいっとつまみあげるインテ。
 だいたい5センチほどだろうか、お手乗りサイズの公斗を、インテはぷらぷら揺らした。
「うぉっ、や、やめ、やめっ」
「あはははは! リリィさん、パス!」
「え?」
 インテにオモチャ同然に投げられた公斗は、宙を舞い、リリィのバストの上に乗ってしまった。
「あん……こ、こういうハプニングは、なぜか恥ずかしいですわ……」
「モノが乗るほど大きいってことだもんねー。……公斗君、私達の計画は止めさせないよ」
 リリィとインテが、公斗を見下ろす。
 公斗は立ち上がり、身構えた。
「くっ……」
「あれえ? まだ戦う気なの? リリィさんのおっぱいの上に立ってるくせに」
 はっと公斗が息を呑んだ時、リリィは両手で重たそうに乳房を持ち上げ、ゆっさと揺らした。
 公斗にとっては、足場全体が大きく上下するということになる。
 たかが乳揺れ一回で体勢を崩されてしまった公斗の頭上に、インテの唇が迫る。
 両手で押しのけようとする公斗をものともせず、ぷるぷるの唇でチュッと公斗に吸い付いたインテは、口を開く。
 はぁっと生暖かい吐息が漏れ、同時に巨大な舌が公斗を舐め回した。
「んぷ! や、やめろ、八分寺……!」
「あはっ……つれないなー。考えてみてよ……」
 ちゅぷ、ちゅぷ、じゅる、と公斗の下半身をしゃぶり、ズボンごと唾液まみれにしながら、インテはほくそ笑んだ。
「……白亜ちゃんにされてるって……思ったら、どう……?」
 公斗の脳裏を過ぎる白亜の姿。

 ――箱入りのお嬢様で、胸は年相応にあるが、性知識はカラッキシの美少女。
 赤ちゃんはコウノトリが運んでくると思ってるぐらいの天然さんだ。
 そんな天使のような白亜が……
 頬を紅く染め、まだ覚えたてのつたない知識で、公斗の体を舐めてくれる。
 恥ずかしそうに……でも、気持ちよさそうなこちらを見て、しあわせそうに……
 ――「大好きです。あなたのこと」――
 
「…………って、しまったー!」
 我に返った公斗は、1センチまで縮んでいた。
「インテさん、あなた催眠術の素質がありますわ」
「えへへ、そうかなー」
 素で目を丸くして感心しているリリィに、無邪気に喜ぶインテ。
 1センチまで小さくなってしまった公斗は、リリィの胸の谷間に足をとられそうになりながら、ふたりに手を振る。
「おーい! 話を聞け! もとに戻せー!」
「あれぇ~? 私達を邪魔するチビ虫が何か言ってるよ、リリィさん」
「ふふふ、本当ですわ。胸にくっついたエッチな虫、どうしてしまいましょう」
 リリィは両手で、ゆっくりと胸の谷間を開いていった。
 ただでさえ豊満すぎる胸。その谷間はエンピツをまるごと埋め尽くすほど深い。
 今の公斗にとっては、底知れない深遠だった。
 とにかく、谷間から離れなければ。幸い、リリィは両手を使って谷間を開けている。谷間に閉じ込められるのは避けないと――
「ふふ。残念」
 目の前に、巨大な肌色の壁が現れた。
 インテの右手のひらだ。塗り壁のようにそびえ立ち、じりじりと向かってくる。
「く、くそっ!」
 何とか押し返そうとするが、その姿をリリィとインテは眺めてくすくす笑うだけだった。
 ゲームコーナーの景品のように押し出され、公斗の体はリリィの胸の谷間へと吸い込まれていく。
「ぅゎぁぁぁぁぁ!」
 壁が柔らかかったのもあり、痛みはなかった。
 だが、谷間の出口までは相当な高さがある。むしむしと蒸し暑い谷間に収まった彼を、この地獄をたかがおっぱいふたつで作り上げているメイドと、イタズラ好きな少女が覗き込んでくる。
「ふふ……まんまとハマりましたわね、チビ虫さん」
「あははっ、バイバ~イ♪」
「ま、待て! ここから出せ、おいっ!」
 喚く公斗を無視して、リリィは谷間から手を放す。
 左右の乳肉がむっちりと密着して、公斗は完全に外界から隔離されてしまった。
 リリィは谷間でまだ微かに動く彼をなぶるように、胸を寄せ上げた。
「あん♪ ……ふふっ、これで公斗様は手も足も出ませんわね」
「うん♪ ……公斗君、聞こえるぅ? ちっぽけなチビ虫ヒーローく~ん?」
 インテがリリィのおっぱいをつっつくが、公斗の声は聞こえなかった。
「あははは、かわいそ~だね。おっぱいの谷間に閉じ込められて手も足も出ないなんてさ!」
 そう言うと、インテはリリィの乳房を両手で強く寄せ上げた。
 乱暴に乳を扱われ、リリィが熱っぽく喘ぐ。
「はっ、あぅん……や、優しくしてくださいまし……」
「あれ? なんか弱気だね、リリィさん」
「だ、だって……インテさんには反撃できませんし」
 それを聞いて目を輝かせたインテは、直後、ギリギリギリと音がするぐらい激しく爆乳を寄せた。
「むぎゅ~~~~~~っっっ!」
「…!」
「あァン!」
 弾力たっぷりに形を変える乳房。
 その狭間には、公斗がぺちゃんこに潰れてしまうほど凄まじい乳圧が掛かる。
 さらに調子に乗ったインテは、左右の乳房を交互にすり合わせたり、激しく揺らしてもてあそんだ。
「……ぁ…はん」
 自分のおっぱいをこびとイジメの道具にされてしまったリリィは、ぼすんと仰向けでベッドに倒れる。
 隣に寝転んだインテは、その胸の谷間から公斗をつまみだした。
 片方でも山のような爆乳に挟まれ、なぶり回された公斗は、ぐったりしていた。
 けらけらと楽しそうに笑うインテ。
「ちょっと遊んであげただけなのに、もうダウン? これから、ずっとリリィちゃんの谷間に住むことになるのにね!」
「……や、やめろ……」
「あはっ。おっぱい怖い? じゃあ、入れてあげる」
 インテは指先でつまんだ公斗を、じわじわとリリィのおっぱいに近づけていく。
 山のようにドンと盛り上がった乳房に接近するたび、公斗は叫んだが、自分の160倍もの大巨人に抗う術などない。
 インテの指で、すぽっと谷間に押し込まれて、公斗は見えなくなった。
 ぐっ、ぐっと奥まで押し込んでから、指だけ引き抜く。
 復活したリリィが起き上がった拍子に、ぶるんと胸が揺れた。
「はふ……。軽くイッてしまった気がしますわ……」
「そんなによかった?」
「ええ……それでは、おもち作りを再開しましょうか」
 立ち上がったふたりは、台所に戻る。
 歩くだけでも豪快に揺れる胸の谷間には公斗がいたが、傍目には、彼の存在は全く認識できなかった。


 ……もちができあがった頃には、夜になっていた。
「ふう、暑いですわ。いい運動です」
 台所を出たリリィは、胸の谷間を少し開ける。
 むわっと熱気が立ち昇り、底の方に茹で上がったような公斗が見えた。
「あらあら、忘れてましたわ。私とインテさんがおもち作りを頑張っている間、あなたはずっと私のおっぱいの谷間に監禁されていましたのね」
「……っ」
「私達の邪魔などするからですわ。ふふっ」
 ぷるんっと谷間が密着して、再び公斗は閉じ込められる。
 乳肉の狭間でわずかに抵抗していたが、リリィが軽く胸を揺するとその抵抗も感じなくなった。
「あん。私のおっぱいの勝ちですわね」
 ドンと無言の存在感を放つ胸を張り、リリィはふふんと鼻を鳴らした。
「私のおっぱいが強いのか、女の乳に負ける超人が虫同然なのか……ふふ、とにかく無力なヒーローですわ」
 誇らしげな胸をなでるリリィ。
 と、その時。固定電話が鳴り出した。
「はいはーい?」
 インテが駆けてきて電話を取る。
 電話の向こうは――白亜だった。
『あのー、八分寺さん。そちらに有家さんはいらっしゃいませんか?』
「え!?」
『じつは連絡がつかなくて……』
 くすんと涙をすする白亜。ぐさっと良心に突き刺さる。
「えーと……」
 どうごまかせば泣かせずに済むか、インテが考えた時――
『おい』
 白亜に代わって、ボディガードのマリの声がした。
『不本意だが……貴様らは、お嬢様の手を煩わせる気か?』
「げっ」
「まぁ……」
 インテと、すぐ近くで聞き耳を立てていたリリィがつぶやく。
 顔を見合わせたふたりは、一瞬、沈黙したが――
「……ふっ、ふっ、ふっ……」
 リリィが肩を小刻みに震わせ始めた。
 瞬時にインテから受話器を取り上げ、宣言する。
「上! 等! ですわ! ついに花風家と決着をつける時が来たようですわね!」
『……たしかに因縁はあるが、長年の戦いとかはなかっただろう』
 主要メンバーで最も常識人であるマリのテンションは当然のように低い。
 しかしリリィはかまわず続けた。
「お嬢様に伝えなさい! あなたの愛しいひとは、私の手の中……いいえ、乳の中にあると!」
『アホか! 私にそんな下品な伝言をさせる気か貴様!』
 怒るマリを無視して、リリィはガチャンと受話器を本体に叩きつけた。
「ふふふ……! 俄然、燃えて来ましたわ!」
「り、リリィさん……かっこいい」
「それほどでも」
「抱いて!」
「あん、喜んで!」
「ふええええええ!?」
 冗談で言ったつもりで押し倒されてしまい、インテはびっくりする。
 ――ともかく、その夜。
 公斗はリリィのブラジャーの中に閉じ込められ、乳首と一緒に眠ったのだった。


◆ ◆ ◆


 ニッポン沿岸――天気は快晴。
 波を掻き分け、現れるのは巨大な天使。
「な、なんだ? 本当に……でかいぞ……!」
 迎撃準備を整えていた艦船の前に、幅200メートルはある金属タライみたいなものが流れてくる。
 そこから立ち上がった少女が、海面に降り立った衝撃で、ぐおんぐおんと大波が巻き起こる。
 甲板から見上げた彼らが見たのは、淡い桜色のワンピースを着た、華奢な御令嬢の姿だった。
「ごめんなさい。でも、わたくしは行かないといけないのです」
 膝下より浅い水深をざぶざぶと掻き分けて直進する白亜。
 色白の脚が大波を起こして艦船を押しのけ、裸足で港に上陸する。
 ズズン、と砂浜に巨大な足跡がつけられ、こっそり忍び込んでいた野次馬は蜘蛛の子を散らすように逃げた。
「……リリィさん。どこですか」
 口調こそ丁寧だが、どこか刺々しい。
 服と同色の日傘帽子が目元を暗くしているせいで、足元の人間達にとっては結構な威圧感があった。
 海水を拭いたい裸足を無意識に少し動かすだけでも大量の砂が寄せられ、山になる。身長300メートルの彼女がとる行動は、全てが規格外だ。
 だが……
「ふふふ! ここですわ、お嬢様! とぅ!」
 白亜の目線より高くに、ヘリコプターが飛んでいる。
 そこからメイドが飛び降りたかと思うと、乗り込んでいたインテが『物体拡大砲mark‐2』を照射した!
 リリィの体が大きく、大きく、大きくなっていく――。

 ずっどぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおん

 おしりから着地した衝撃で、港町がまるごと消し飛ぶ。
 リリィは、白亜よりもさらに巨大な、3000メートルになっていた。
 計算上、白亜の10倍、人間の1500倍近く。人間はリリィから見て、1ミリもない「点」でしかない。
 当然、同じ比率で巨大化したバストは、まさに山、大陸のごとく誇らしげに揺れている。
 自分の10倍ある大巨人に、白亜は立ちすくんでしまう。
「あ……あぅ……」
「うふぅ、少し大きすぎたかも知れませんわね」
 リリィは白亜には目を向けず、ぶるんと胸を揺らした。
 もはや高層ビルをもゴミのように挟み潰せるサイズの超爆乳は、揺れただけで砂浜に突風を起こし、そこにいた男達を塵同然に舞い上げた。
 そしてようやく、白亜に目を向ける。
「ふふふ……勝負は見えていますわね」
「ず、ずるいです……あの光線銃、改造したのですか!?」
「そのとおりですわ。あぁん、それにしても気持ちいいですわ」
 リリィは、自慢のバストを持ち上げるように腕を組んだ。
「私のブラの中に、公斗様がいると想像すると……はぅん、もっと興奮してしまいますわ」
「な、なっ!?」
「1センチまで縮んだ公斗様……おそらくは超人効果で、巨大化銃の影響は受けていないでしょう。つまり、公斗様はまだ1センチのまま、私の乳首の上をさまよっているということですわ」
 リリィは、はぁはぁと熱っぽい吐息をこぼしながら、あられもなく仰向けに転がり、自分の胸をもんだ。
「はぁん……公斗様、私の乳輪の上はどのような世界ですか? ふふ、きっとどこまでも続くデコボコの世界と、見たこともない山でしょうね。その山は私の乳首ですわ」
「…!」
「ウフッ! 私の乳輪の上を逃げ惑っているのでしょうか? 無駄ですわ。乳輪の上から出ても、そこから先は無限に続く乳房の上……あぁん、何も感じないことに興奮してしまいますわ!」
 リリィの手が、ボヨンボヨンと胸をもむ。
 30万センチメートルのリリィと、1センチメートルの公斗。相対的にミクロサイズの公斗にとっては、わけもわからず翻弄されるしかない状況だ。
 白亜は必死に駆け寄り、リリィの腕にしがみついた。
「やめてください! 有家さんを傷つけるのは許しません!」
「あん♪ お人形のくせに、うるさいですわね」
 リリィは片手で白亜をつまみあげると、自前の爆乳の谷間に挟んでしまった。
 あえて首から上だけを出した状態で。
「こ、こんな下品なところに……!」
「ふふふ、生き埋め状態ですわね。しばらく、そこにいるといいですわ」
 そう言うと、リリィは立ち上がった。首から下をすっぽり乳圧に捕らわれた白亜は、手も足も出ない。
「ど、どこに行くつもりですか!?」
「どこにも行きません。ちょっと、そこらを散歩するだけですわ」
 リリィは、ぶるんぶるんと胸を揺すりながら歩き出す。
 その足元で、無数の家々がゴミのように踏み潰されていく。
「あら、何か踏んでしまいましたわ♪」
「や、やめてください! そんなひどいこと……!」
 白亜は止めようとするが、リリィのおっぱいの間でうんうん唸ることしかできない。
 公斗もリリィの乳首の上にしがみつくのに精いっぱいだ。
 靴の下で町ひとつを更地にしながら隣町まで進んだリリィは、町の真ん中にそびえ立った。
「ふふふ、皆様ごきげんよう。今からお散歩をいたしますが、胸が大きいので……足元はよく見えませんの。でも、か弱いメイドですから怯えたりしないでくださいね」
 リリィのメイド服や下乳に邪魔されて、リリィの顔を見ることができた人間は少なかった。もちろん、見上げたりせずに我先に避難する者も多かったが。
 しかし皮肉にも、リリィの一歩目は避難中の群れの上に進み出た。
「お散歩開始ですわ」
 無造作に踏み出した一歩が、密集した人々を靴の下で押し潰す。一瞬のうちにプレスされ、地面と同化してしまった彼らを見下ろしもせず、リリィは二歩目を踏み出す。
 ドズン、ドズンと何気なく歩くリリィの足が町と山をたった数歩で踏み潰した。
 近隣に集まっていた雲とヘリコプターは、歩くたびに揺れる爆乳に直撃されるか、乳揺れが巻き起こす強風に煽られて墜落する。
「お、鬼です……悪魔ですっ……!」
 聞こえてくるあんまりな惨事に、白亜はぽろぽろ泣き出してしまうが、リリィは自慢げに胸を張った。
 ドン、と突き出された乳房が、近くを飛ぶ迎撃ヘリをゴミのように爆散させた。
「見たくないなら、見なければいいのですわ」
 リリィは人差し指の先を白亜の頭に添え、ぐっと押した。
「あっ……い、いや! いやぁ……!」
 必死にイヤイヤをしながらも、白亜はすっぽり谷間に埋もれてしまった。
 嫌がる声が聞こえなくなり、しんと静まり返る。
 彼女のかぶっていた帽子が、ポツンと墓標のように谷間の上に残っていた。
「ふふふ……しょせんは、か弱いお嬢様。巨人という体格差がなければ、おっぱいの谷間ですすり泣くことしかできないお人形ですわ」
 潰さない程度に乳圧をかけると、白亜の悲痛な叫び声がもれ聞こえた。
「あん、いい気味ですわ。このままお持ち帰りして、今度こそ鳥カゴで飼ってさしあげますわね」
 発情したかのように頬を紅く染めたリリィが、肉の牢と化した乳房の谷間を眺めながら、れろりと指先を舐めた。
 しかし、その時!
 特注ブラで覆った乳首に、微かな刺激を感じた。
「? ……まさか」
 かゆみ同然の刺激は乳首の上を這い回り、乳輪に体当たりを仕掛けている(気がする)。
 リリィは、クスッと微笑んだ。
「さすが……相対的に30万倍の体格差がある相手に、痛痒を感じさせるとは。そして、そんな超人を造り出すリカコ様の科学力、敬服いたしますわ」
 ですが、とリリィは胸を抱えるようにもみ始めた。
 左右からではなく、前後に。
「あっ、あっ、あん、無駄ですわ、公斗様。それを、あん、思い知らせてさしあげます」
 乳房をもんだことで、快感を覚えたリリィの乳首が大きくなっていく。
 もとの2倍ほどになった乳首は、それだけで公斗を絶望させるに足る存在感だが……
 突如、乳腺から大量のミルクが噴出した!
「あはぁんっ! んぅ、で、出ちゃいましたわ……ぁん」
 3000メートルの女巨人が、立ったまま自分の胸をもんでブラの中に母乳を出してしまう光景は、近隣の町からも目視されるほど丸見えだった。
 じわぁっとメイド服の胸元にシミができる。
 同時に、公斗の存在感が消えた。
「あふ……っ。ふふふ、乳首の先の方にいて巻き込まれてしまったのでしょうか? それとも乳首にしがみついています?」
 リリィは快感にぷるぷる震えながら、熱い吐息をもらした。
「どちらにしろ無意味ですわ。巨大化した時の私のミルクには、あんっ……男性を興奮させる媚薬効果がありますの」
 それはつまり、ミルクまみれになったブラの中にいる公斗が、強制的に再縮小されてしまうということだ。
 乳首の先っちょ……乳腺あたりに微かなかゆみを感じたが、それは敏感な乳首の先でかろうじて認識できる程度で、さっきよりずっと小さかった。
「あん♪ 1ミリまで縮んでしまいました? これで体格差は300万倍ですわね」
 公斗にとって、もはやリリィの全容を認識することなどできまい。
 乳首の先っちょについたゴミのような彼は、まるで大洞窟のごとく口を開けた乳腺を前にして、リリィの言葉を聞くだけだ。
 リリィは胸を抱えると、下乳をさらす形で、乳首を上に向けた。
 乳腺の先にいた公斗は、抗う間もなく重力に従い、乳腺の奥へと吸い込まれていく。
 念のため、乳房を何度か揺らしたリリィは、ふぅっと満足げに息をついた。
「これで邪魔者は完全に始末しましたわ……ふふふ、媚薬ミルクをたっぷり飲んで、どこまでも永遠に小さくなってくださいまし」
 たぷるん、と爆乳が揺れる。
 乳腺に公斗を、谷間に白亜を捕らえたリリィは、頭上を旋回するヘリコプターに目配せした。
「インテさん、さらに巨大化ですわ。計画変更です」
「え? で、でもリリィさん、公安とか秘密結社とか裏社会で睨まれるとか言ってなかった?」
「言いましたが、今は気分が乗ってますの」
「そ、そう……でも正直、私も賛成♪」
 インテは再び、『物体拡大砲mark-2』を放った。
 虹色の光を浴びて、リリィの体が、大きく……大きく……大きくなっていく。
「はぁぁぁぁあああ~~~~ん!」
 人類の約15000倍――。
 身長30000メートルにも達した超メイドが、快感の嬌声を上げた。
 もはや、遠くから脚を見上げるだけでも、どこまでも体をそらさなくてはならない。雲なんてとっくに突き抜けている。
 バストは山というより、それそのものが島や大陸と言っていい雄大さだ。
「ふぅ……っ。あら、白亜お嬢様は小さいままですのね。谷間に埋もれていたせいかしら」
 300メートルもある白亜も、今のリリィには1センチちょっとの虫に過ぎない。谷間に収まった異物が相対的に縮んだのを感じたリリィは、ふふっと微笑んだ。
 裏のなさそうな無邪気な微笑が、かえって怖い。
「さて。Bパターンで計画実行ですわ」
 リリィは、無造作に歩き出した。

 すさまじい轟音とともに、先ほどとは比較にならない一撃が襲う。

 町が一瞬にして踏み潰され、さらに遠く離れていたはずの町が次に踏み潰される。
 一歩の歩幅がすさまじく大きく、さらに靴のサイズも数千メートルあった。逃げる間もなく壊滅していく。
 しかし、リリィの目的地は数歩先の――実際には遠く離れた――治々美市にあった。
「ふふふ! まだ巨大な私が着くのが早すぎて、まだ誰も避難していませんわね!」
 リリィはそう言うと、足元の治々美市を覗き込んだ。
 エプロンのポケットから出したナイフで、町の周囲を切っていく。リリィとともに15000倍になったナイフが巨大な溝を作り出し、リリィはそこに指を入れた。
 治々美市ドーム以外の、インテが欲しがっていた区画を、まるごと地面から引き剥がしていく。
「ぅゎぁぁぁぁっ」
「きゃぁぁぁぁぁぁ」
「ぃゃぁぁぁぁ」
 町から無数の悲鳴が聞こえるが、リリィは構わず町を持ち上げていく。
「さあ、インテさん。入手しましたわ」
「すごーい! ……でも、どうやって小さくするの?」
「その物体拡大砲のダイヤルを逆に回して……」
 リリィが言った――その時!

「誰かを忘れているようね……乳牛メイド!」

 どこからか、聞き覚えのある声がした。
 リリィとインテが反射的にため息をつきたくなる一方、乱入者はリリィよりも派手に町をぶっ壊しながら参上する。
「天使と超人が敗れし時! 世界を救いに現れる!」
「……足元を見てから言ってほしいですわ」
「20000/1(2万倍)スケールで再現! ロボ白亜ちゃん!!」
 出てきたロボットの白亜は、手足の関節がロボっぽいが、ほぼニンゲンそっくりだった。
 しかもリリィより巨大である。
「と、とりあえず、でかいですわ……」
「ふっ。大変だったわ。吸水クジラを捕まえなくちゃいけないのに白亜ちゃんが手伝ってくれなくて」
「くじら?」
「公斗と白亜ちゃん、治々美市を返してもらうわ!」
 ロボ白亜がリリィに飛びかかる!
「させるかっ!」
 インテの放った虹色の光線がリリィを巨大化させる。
 15000倍から30000倍まで巨大化したリリィは、ロボ白亜の突進をおっぱいで弾き返した。
「あん」
「うぎぎ、相変わらず肉々しい……もとい、憎々しい胸ね!」
「なんで言い直しましたの?」
「しかし! 多少のサイズ差なら覆せるのよ! 暗黒大正義パワーで!」
 ロボ白亜が取り出したのは――
 でかいチェーンソーだった。
「それはナシですわ――!」
「だってランチーにも出番ないと」
「だったらロボ娘をお嬢様じゃなくて彼女にすればよかったでしょうが!」
「あ。そっか」
 というわけで、ランチーは今回お留守番です。
『ズルイれす……』


「――しかし、ものすごく大きくなってしまいましたわ」
 ロボ白亜を乳ビンタ一発で粉砕したリリィは、改めて周囲を見回す。
 約30000倍まで巨大化したリリィの視点では、あらゆる地点を見下ろせた。
「まぁ、目的は果たせましたし……そろそろ、もとに戻りましょうか」
「……リリィさん」
「はい?」
 インテは、少し悩んでから、言った。
「……その町、もとの場所に戻しといて」
「え? ど、どうしてです?」
「だって……」
 インテは、ふっと顔を伏せた。
「――私、何もしてないし」
「あ……」
「やっぱり、野望は自力で叶えた方がドSっぽいよね! ふふふ……リリィさんにだって負けないんだから!」
 めらめらと闘志を燃やし、インテは宣言する。
 治々美市をもとの位置に戻したリリィは、にっこり微笑んだ。
「期待していますわ。いつでもご協力いたします」
(……微妙にイイハナシに持っていこうとしてるみたいですけど)
(……俺達の立場って……)
 谷間と乳腺で、白亜と公斗がため息をこぼした。


◆ ◆ ◆


 ……その後。
 リリィの催眠術を利用した洗脳電波を使い、巨人の出現を「なかったこと」にする準備を進める一方で……
 谷間に挟んでいた白亜はすぐに出せたが、乳腺に入ってしまった公斗は、なかなか出て来なかった。
「もとのサイズに戻ってから、搾乳器か何かを使えば楽なのですが……本当にこれで?」
「もちろんです! そ、そんな下品な……危ない機械で有家さんが溺れてしまったら一大事ですから!」
 300メートルのリリィが仰向けになり、300メートルの白亜が覆いかぶさる。
 はむ……と乳首をくわえる。
 おそらく乳腺の中でどこまでも縮んでいき、さまよっているであろう公斗のために、ちゅうちゅうとリリィの乳首を吸う白亜。
 巨人ふたりを乗せられる金属タライはないため、乳腺からの救助活動は砂浜で行われていた。
 が、初めての行為であるため……
 こくん、と白亜は飲み込んでしまった。
「……あ」
 さーっと白亜の顔が青ざめる。
「の、飲ん……じゃっ……」
「……まぁ、胃の中に媚薬はありませんし、超人ですからおしりから出てくるのでは?」
「うぅ……それはそれで恥ずかしすぎます!!」
 白亜は恥ずかしがっていたが、結局その後、公斗は無事に回収されたのだった。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



← メインページに戻る




サイトURL:http://bukimi.x.fc2.com/index.html
アドレス:maidlily45@gmail.com



inserted by FC2 system